フォカッチャ・ジェノヴェーゼ
高加水生地とサラモイア(塩・水・オリーブオイルの乳化液)で仕上げる、リグーリア地方の伝統的なパン、フォカッチャ・ジェノヴェーゼ。日本のスーパーで手に入る強力粉とドライイーストでも、外はかりっと中はもっちりとした一枚に焼き上がります。

- 調理時間
- 140分
- 人数
- 4名分
- 材料費
- 約¥400
- 難易度
- ふつう

3つのレシピ、ひとつの料理
同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。
伝統的な配合は、強力粉、水、イースト、塩、そしてオリーブオイルの五つだけです。生地の水分量は粉の重さに対して75〜80%というかなり高い割合で、これがフォカッチャ・ジェノヴェーゼ特有の軽い食感とふんわりした気泡構造を生みます。仕上げに欠かせないのがサラモイアで、これがなければこのパンは成立しません。
材料(4人分)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 強力粉 | 400g |
| 水(常温) | 320ml |
| 生イースト | 4g |
| 塩 | 8g |
| エキストラバージンオリーブオイル(生地用) | 20ml |
サラモイア(仕上げ用)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 水 | 50ml |
| エキストラバージンオリーブオイル | 30ml |
| 粗塩 | 小さじ1 |
作り方
1. 生地を仕込む
ボウルに強力粉(400g)を入れ、生イースト(4g)を溶かした水(320ml)を少しずつ加えます。指先で生地を持ち上げては折りたたむ動作を繰り返し、粉と水をなじませます。粘度が高くべたつく生地になりますが、それが正しい状態です。全体がまとまってきたら塩(8g)とオリーブオイル(20ml)を加え、さらに5分ほど同じ動作を続けます。
なお、この生地は台の上でこねません。加水率が高いため、ボウルの中で持ち上げては折りたたむようにして扱うのが伝統的なやり方です。
2. 一次発酵
ボウルにラップをかけ、30分ほど常温で休ませてから、冷蔵庫に移して8〜10時間、あるいは一晩置きます。低温でゆっくり時間をかけて発酵させることで、香りに深みが出ます。
3. 天板に広げる
たっぷりのオリーブオイルを塗った天板に生地を取り出し、指先を生地の下に差し込むようにしながら、中心から外側へ優しく押し広げます。厚さが均一になり、天板いっぱいに広がったら止めます。
4. くぼみをつける
生地の表面全体に指を垂直に押し込み、底に届くくらいの深さのくぼみを規則正しくつけていきます。これがフォカッチャ・ジェノヴェーゼを他のどのパンとも違うものにする、いちばんはっきりした身振りです。
5. 二次発酵
天板ごと布をかけて、常温で45分〜1時間ほど、生地がひとまわり膨らむまで休ませます。
6. サラモイアをまとわせる
水(50ml)とオリーブオイル(30ml)、粗塩(小さじ1)をフォークでよく混ぜて乳化させ、くぼみに溜まるように生地全体にまわしかけます。
なお、サラモイアは焼く直前にかけるのが伝統的な順番です。乳化した水分がくぼみに溜まり、焼成中に蒸発しながら生地を内側からふっくらとさせ、表面には塩の結晶と艶を残します。
7. 焼く
230〜250℃に予熱したオーブンで15〜20分焼きます。表面全体がこんがりと黄金色になり、くぼみの底にうっすら焦げ色がついてオリーブオイルの香りが立ち上ってきたら焼き上がりの合図です。
⚠️ やってはいけないこと
薄力粉だけで作る 加水率75〜80%の生地を支えるには、グルテンの力が要ります。薄力粉だけでは生地がだれてしまい、フォカッチャ・ジェノヴェーゼの気泡構造になりません。
サラモイアを省略する、または焼いた後にかける サラモイアはこのパンを他のあらゆる種類のパンと分けている要素です。省略すると艶のある焼き色も、あの独特の塩気も生まれません。
生地を麺棒で伸ばす 麺棒は生地の中の気泡をつぶしてしまいます。フォカッチャ・ジェノヴェーゼは指で優しく広げるのが伝統的な方法です。
生地に別の具材を練り込む 生地はあくまで粉・水・イースト・塩・オリーブオイルの五つだけで仕上げるのが伝統です。具材を練り込んだ生地は、リグーリアの別の総菜パンや、他の地方のフォカッチャの発想であり、フォカッチャ・ジェノヴェーゼとは呼べません。
日本の家庭でも、フォカッチャ・ジェノヴェーゼの核心は十分に再現できます。強力粉とドライイーストはスーパーの製菓・製パン材料コーナーで手に入り、特別な道具は必要ありません。一晩かけて低温発酵させる本格版に対し、ここではイーストの量を少し増やし、常温で発酵時間を短縮する方法にします。
主な変更点
| 項目 | L1(本格) | L2(日本での代用) | 妥協点 |
|---|---|---|---|
| イースト | 生イースト、低温で長時間発酵 | ドライイースト、常温で短時間発酵 | 香りの複雑さはやや控えめになるが、気泡構造は十分に再現できる |
| オリーブオイル | リグーリア産オイル | 一般的なエキストラバージンオリーブオイル | 香りはまろやかになるが、サラモイアの技法は変わらない |
| 発酵時間 | 8〜10時間(冷蔵) | 合計2時間前後(常温) | 平日でも仕込める時間に短縮 |
材料(4人分)
| 材料(JP) | 元の名前(IT) | 分量 | どこで買えるか | 代用 |
|---|---|---|---|---|
| 強力粉 | farina di forza | 400g | 製菓・製パン材料コーナー | — |
| 水 | acqua | 320ml | どこでも | — |
| ドライイースト | lievito di birra | 3g | 製菓・製パン材料コーナー | 生イーストでも可(分量は要調整) |
| 塩(生地用) | sale | 8g | どこでも | — |
| オリーブオイル(生地用) | olio extravergine d'oliva | 20ml | どこでも | — |
| 粗塩(サラモイア用) | sale grosso | 小さじ1 | どこでも | 食卓塩でも代用可(結晶感はやや弱まる) |
| オリーブオイル(サラモイア用) | olio extravergine d'oliva | 大さじ2 | どこでも | — |
| 水(サラモイア用) | acqua | 大さじ3 | どこでも | — |
作り方
-
ボウルに強力粉(400g)を入れ、ドライイースト(3g)を溶かした水(320ml)を少しずつ加えながら、指先で生地を持ち上げては折りたたむ動作を繰り返します。粉気がなくなったら塩(8g)とオリーブオイル(20ml)を加え、さらに5分ほど同じ動作を続けます。
讃岐うどんの生地を寝かせながら折りたたんでいく工程に近い感覚です。力を入れてこねるのではなく、生地を持ち上げては重ねる動作を繰り返します。
-
ボウルにラップをかけ、暖かい場所で1時間ほど、生地がひとまわり大きくなるまで発酵させます。
-
天板にオリーブオイルを塗り広げ、生地を取り出して中心から外側へ指で優しく押し広げます。天板いっぱいの厚さ1〜1.5cmほどに広げます。
-
指を垂直に立てて生地の表面全体を押し、底に届くくらいのくぼみを規則正しくつけます。
-
布をかけて常温で30〜40分ほど、生地がふっくらするまで休ませます。
-
水(大さじ3)とオリーブオイル(大さじ2)、粗塩(小さじ1)をフォークでよく混ぜて乳化させ、くぼみに溜まるように生地全体にまわしかけます。
-
220〜230℃に予熱したオーブンで18〜20分、表面全体がこんがりと黄金色になるまで焼きます。
なお、家庭用オーブンは業務用より温度が上がりにくいことが多いため、表面の色づき具合を見ながら焼き時間を1〜2分ずつ調整してください。
ヒント&コツ
- 生地はかなりべたつきますが、水分量が高いほど焼き上がりが軽くなります。手に少量のオリーブオイルをつけて扱うと作業しやすくなります。
- くぼみは深いほどサラモイアがよく溜まり、焼き上がりの表情も豊かになります。
- 焼きたてがもっとも美味しく、少し冷めてももっちり感が残ります。当日中に食べきるのがおすすめです。
オリーブオイルの香りとサラモイアの塩気に包まれた一枚は、スーパーの材料でも十分にジェノバの朝を思わせます。次にリグーリアを訪れることがあれば、焼きたてのフォカッチャをカプチーノに浸してみてください。あなたの台所で焼き上がった一枚と、静かに重なるはずです。
よくある質問
Q. 強力粉がなければ薄力粉で代用できますか? A. 薄力粉だけではグルテンの力が足りず、高い加水率の生地を支えられません。パッケージに「パン用」とある強力粉、または準強力粉を使うのがおすすめです。
Q. どのくらい日持ちしますか? A. 焼いた当日がもっとも美味しく、常温であれば当日中に食べきるのが理想です。翌日以降は密閉容器に入れて常温か冷蔵で保存し、食べる前にオーブントースターで軽く温め直すと、外側のかりっとした食感が戻ります。
Q. 冷凍できますか? A. 焼き上がった状態で1切れずつラップに包んで冷凍すれば、2週間ほど保存できます。自然解凍したあと、オーブントースターで温め直してください。
Q. 一晩発酵させる時間がない場合はどうすればいいですか? A. 日常レシピ(L2)のように、イーストの量を増やして常温で発酵させる方法で対応できます。香りの奥行きはやや控えめになりますが、気泡構造や食感は十分に楽しめます。
Q. フォカッチャ・ジェノヴェーゼに合う食べ方はありますか? A. ジェノバでは、そのままカプチーノに浸して朝食にするのが定番です。軽い前菜として、生ハムや熟成した乳製品の盛り合わせと一緒に出しても馴染みます。
