本格カチョ・エ・ペペのレシピ
パスタとペコリーノ・ロマーノと黒胡椒、材料はたった3つ。日本のスーパーでも手に入るチーズで、とろりと乳化したソースに仕上げる本格カチョ・エ・ペペの作り方と、失敗しないコツを紹介します。

- 調理時間
- 20分
- 人数
- 2名分
- 材料費
- 約¥1000
- 難易度
- ふつう

この料理について
カチョ・エ・ペペは、ラツィオの牧童たちが移動生活の中で生み出した一皿だと伝えられています。長く家を離れる羊飼いたちは、熟成させたペコリーノと乾燥パスタ、当時は貴重だった黒胡椒を鞄に詰めて旅をしました。どちらも日持ちのする食材で、火とフライパンさえあれば、道の途中でも一皿の料理に変わります。
正確に何世紀に生まれたのかは、確かな一次資料では裏付けられていません。18〜19世紀ごろという説が広く語られていますが、これも言い伝えの域を出ません。それでも、パスタとペコリーノ・ロマーノと黒胡椒という3つの材料の組み合わせ自体は、今日に至るまで大きく変わっていないようです。
ローマでは今も、街を代表する料理のひとつに数えられています。ただし見た目の単純さとは裏腹に、乳化の加減ひとつでチーズが分離してしまう、扱いの難しい料理としても知られています。だからこそ、なぜそう作るのかを理解しておく価値があります。
3つのレシピ、ひとつの料理
同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。
本格的なカチョ・エ・ペペの材料は、パスタとペコリーノ・ロマーノ、黒胡椒。本当にこの3つだけです。伝統的に油も乳製品も加えません。材料が少ないからこそ、ひとつひとつの温度管理と分量が、そのまま仕上がりを決めます。
材料(2人分:調理時間20分)
| 材料 | 量 |
|---|---|
| トンナレッリ(正方形断面の生パスタ)または太めのスパゲッティ | 160g |
| ペコリーノ・ロマーノ(すりおろし) | 100g |
| 黒胡椒(粒) | 大さじ1 |
| 塩(パスタ用) | 適量 |
作り方
-
黒胡椒(大さじ1)を粗く挽きます。半量を耐熱容器に入れた熱湯150mlほどに加え、そのまま浸して色と香りを移しておきます(胡椒だし)。
-
ペコリーノ・ロマーノ(100g)をボウルに入れ、胡椒だしを人肌程度まで冷ましてから大さじ1〜2ずつ加え、なめらかなペースト状に練ります。
なお、冷ましてから少しずつ加えるのがポイントです。熱いまま加えると、チーズが糸を引くように分離してしまいます。
-
別の鍋にたっぷりの湯を沸かして塩を加え、トンナレッリ(160g)をアルデンテより少し手前まで茹でます。茹で汁は多めに取り分けておきます。
-
フライパンに残りの黒胡椒を入れ、油を引かずに弱めの中火で30秒ほど乾煎りします。香りが立ったら火を止め、残りの胡椒だしを注ぎ入れます。半分ほど茹だったパスタをフライパンに移し、茹で汁を少しずつ加えながらリゾットのように混ぜ、アルデンテに仕上げます。
-
火を止めて30秒ほど温度を落ち着かせてから、先ほど練ったペコリーノのペーストを茹で汁でゆるめながら加え、手早く和えます。とろりと乳化したら皿に盛り、仕上げに黒胡椒をふります。
⚠️ やってはいけないこと
- 油や乳製品で「助けない」: ペコリーノと茹で汁だけで十分に乳化するように、この料理は組み立てられています。油脂やとろみのある乳製品を足すと質感が重くなり、別の料理に近づいてしまいます。
- チーズを熱すぎる状態に直接加えない: 沸騰したままの茹で汁やフライパンにチーズを振り入れると、糸を引くように分離してだまになります。必ず火を止め、少し温度を落ち着かせてから加えてください。
- チーズを入れすぎない: 量が多すぎると、なめらかさではなく重さになります。適量を守ることが、軽やかな仕上がりの決め手です。
日本のスーパーでも、カチョ・エ・ペペの骨格はきちんと再現できます。ペコリーノ・ロマーノは輸入食材店で探すことが多い一方、パルミジャーノ・レッジャーノや粉チーズなら普通のスーパーでも手に入ります。塩加減を少し調整すれば、3つの材料だけのシンプルさは変わりません。
主な変更点
| 項目 | L1(本格) | L2(日本での代用) | 妥協点 |
|---|---|---|---|
| チーズ | ペコリーノ・ロマーノ | パルミジャーノ・レッジャーノ または粉チーズ | 塩気と個性がやや穏やかになる |
| パスタ | トンナレッリ | スパゲッティ(乾麺) | 本場でも認められている選択で、優劣はない |
| 黒胡椒 | 粒から挽いて乾煎り | 黒粒こしょうがあれば同じ手順、なければ挽いてあるものでも可 | 香りがやや穏やかになる |
材料(2人分:調理時間20分)
| 材料(JP) | 元の名前(IT) | 分量 | どこで買えるか | 代用 |
|---|---|---|---|---|
| スパゲッティ(乾麺) | pasta (tonnarelli/spaghetti) | 160g | どこでも | 太めの乾麺ほどソースが絡みやすい |
| パルミジャーノ・レッジャーノ または粉チーズ | pecorino romano | 100g | 輸入食材コーナー/チーズ売り場 | ペコリーノ・ロマーノが見つかれば置き換え可(塩気が強く出る) |
| 黒粒こしょう | pepe nero | 大さじ1 | スパイス売り場 | 挽いてあるものでも可(香りはやや穏やか) |
| 塩 | sale | 適量 | どこでも | — |
作り方
-
黒粒こしょう(大さじ1)を粗く挽きます。半量を耐熱容器に入れた熱湯150mlほどに加え、そのまま浸して色と香りを移しておきます(胡椒だし)。
-
パルミジャーノ・レッジャーノ(100g)をボウルに入れ、胡椒だしを人肌程度まで冷ましてから少しずつ加え、なめらかなペースト状に練ります。
熱いまま一気に溶き入れず、少し冷ましてから加える感覚は、赤だしの味噌をお玉の中でだしと合わせてから鍋に加えるときと同じです——一気に煮立てると、風味も食感も損なわれてしまいます。
-
別の鍋にたっぷりの湯を沸かして塩を加え、スパゲッティ(160g)をアルデンテより少し手前まで茹でます。茹で汁は多めに取り分けておきます。
-
フライパンに残りの黒粒こしょうを入れ、油を引かずに弱めの中火で30秒ほど乾煎りします。香りが立ったら火を止め、残りの胡椒だしを注ぎ入れます。半分ほど茹だったパスタを移し、茹で汁を少しずつ加えながら混ぜ、アルデンテに仕上げます。
-
火を止めて30秒ほど温度を落ち着かせてから、先ほど練ったチーズのペーストを茹で汁でゆるめながら加え、手早く和えます。本場のカチョ・エ・ペペにもひけを取らない、とろりと乳化した一皿に仕上がります。
ヒント&コツ
- 胡椒だしを冷ましてからチーズに加えるのが、だまにならない一番のコツです。急がず人肌になるまで待ちましょう。
- 茹で汁は少しずつ加えるのが鉄則です。一気に加えると水っぽくなり、乳化が壊れてしまいます。
- チーズはやや細かめにすりおろすと、パスタとの一体感が増します。この3つのポイントを守れば、失敗しないで仕上がります。
スーパーの材料でも、ここまでくればカチョ・エ・ペペの芯はしっかり残ります。次にローマの小さな食堂に立ち寄ることがあれば、同じ一皿を頼んでみてください。あなたの台所で乳化させたチーズの記憶と、静かに重なるはずです。
⚠️ ここで紹介するのは、材料3つだけのカチョ・エ・ペペを、コンビニの材料だけで簡単に作る時短版です。本場の力強い風味とは違います——それでも、疲れて帰った夜に、湯気の立つ一皿があることの価値は変わりません。時間のある週末には、日常レシピ(L2)もぜひ試してみてください。
材料(1人分)
| 材料 | 量 |
|---|---|
| スパゲッティ(乾麺) | 1袋(100g程度) |
| 粉チーズ | 大さじ4 |
| 黒胡椒(挽いてあるもの) | 小さじ1 |
| 塩 | 少々 |
作り方
- 湯を沸かして塩を加え、スパゲッティを袋の表示通りに茹でます。茹で汁は大さじ3ほど取り分けておきます。
- 小さめのボウルに粉チーズ(大さじ4)と黒胡椒(小さじ1)を入れ、茹で汁を少しずつ加えながら、とろっとしたペースト状に溶きます。
- 茹で上がったパスタを粉チーズのペーストに加え、フライパンを使わずそのままぐるぐると手早く和えます。
- パサつくようなら茹で汁をさらに大さじ1ほど加え、とろりとまとまるまで混ぜます。
- 皿に盛り、仕上げにもうひと振り黒胡椒をかけて完成です。
時間のある日には、粒の黒胡椒とチーズで作る日常レシピ(L2)も試してみてください。同じ3つの材料が、少しだけ違う顔を見せてくれます。
よくある質問
なぜオイルや乳製品を足さずに仕上げるのですか?
チーズと茹で汁だけで十分に乳化するように考えられた料理だからです。油分や乳脂肪の多い材料を足すと、この乳化の仕組みが変わってしまい、カチョ・エ・ペペ本来の軽やかな仕上がりが失われます。
チーズがだまになってしまいました。防ぐには?
チーズを熱すぎる液体に直接加えるのが主な原因です。胡椒だしや茹で汁は必ず人肌程度まで冷ましてから、少しずつ加えるようにしてください。フライパンも、火を止めて少し温度が落ち着いてから和えるのがポイントです。
ペコリーノ・ロマーノが手に入らない場合は?
パルミジャーノ・レッジャーノや粉チーズで代用できます。塩気と個性がやや穏やかになるので、味を見ながら塩を少し調整してください。輸入食材を扱うスーパーや通販でも見つかることがあります。
保存や冷凍はできますか?
カチョ・エ・ペペは作りたてが一番おいしく、乳化したソースは時間が経つと分離しやすいので保存には向きません。残った場合は冷蔵で翌日中に食べきってください。冷凍はおすすめしません。
スパゲッティとトンナレッリ、どちらが正しいですか?
どちらも正統な選択です。古くから伝わるのはトンナレッリですが、スパゲッティも同じように受け入れられている組み合わせです。本格レシピ(L1)ではトンナレッリを紹介していますが、日常レシピ(L2)で使うスパゲッティも、手に入りやすさの違いであって優劣ではありません。
材料がたった3つなのに、なぜ難しいと言われるのですか?
シンプルだからこそ、ごまかしがきかない料理だからです。チーズと茹で汁の乳化だけで仕上げるため、温度がわずかに違うだけでチーズが分離してしまいます。2025年には、この乳化のしくみを分析した研究がイグノーベル賞を受賞するほど、家庭でも安定させるのが意外と難しい現象として話題になりました。それでも、火を止めるタイミングと温度にさえ気をつければ、失敗せずに作れます。
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