カンノーロ / Cannoli
パリッと揚げた生地に、水切りした羊乳リコッタをたっぷり詰めるシチリアの伝統菓子。日本のスーパーで手に入る材料と手作りの型で、揚げたてのサクサク感を再現します。

- 調理時間
- 90分
- 人数
- 4名分
- 材料費
- 約¥2500
- 難易度
- 本格的

この料理について
カンノーロの起源には複数の説があります。ひとつは、9世紀から11世紀にかけてのイスラム支配下、カルタニッセッタの後宮でうまれたという言い伝えです。もうひとつは、パレルモの女子修道院で、修道女たちが羊乳のリコッタと砂糖、刻んだピスタチオや砂糖漬けの柑橘を使って完成させたという説です。19世紀後半、修道院の解散にともなってレシピが街の菓子店に広まり、パレルモがその洗練と流通の中心地になりました。名前の由来は、生地を巻きつけるのに使われた川辺の「葦(あし)」だと言われています。
現在では国の伝統食品リストにも登録され、シチリアを代表する菓子として揺るぎない地位を築いています。皮はラードとマルサラ酒を使った生地を薄くのばして揚げ、リコッタのクリームは食べる直前に詰めること——この二つが、カンノーロを名乗るための譲れない条件です。
3つのレシピ、ひとつの料理
同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。
カンノーロの骨格は、揚げてパリッとさせた生地と、水切りして裏ごしした羊乳のリコッタ(羊の乳から作るフレッシュチーズ)の二つに尽きます。それぞれの役割を理解すると、なぜこの手順を守るのかが見えてきます。
材料(4人分・カンノーロ12個分)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 薄力粉 | 250g |
| ラード | 25g(室温にもどす) |
| グラニュー糖 | 15g |
| 塩 | ひとつまみ |
| マルサラ酒(辛口) | 70ml |
| 白ワインビネガー | 小さじ1 |
| 卵白(生地を閉じる用) | 1個分 |
| 揚げ油 | 適量 |
| リコッタ(羊乳、一晩水切り) | 500g |
| 粉糖 | 150g |
| チョコチップ | 70g |
| 砂糖漬けオレンジピール | 40g |
| ピスタチオ(刻み) | 20g |
| ドレンチェリー | 12個 |
作り方
-
薄力粉(250g)に塩(ひとつまみ)とグラニュー糖(15g)を混ぜ、ラード(25g)を指先ですり込みます。 マルサラ酒(70ml)とビネガー(小さじ1)を少しずつ加えながら、まとまりのある固めの生地に仕上げます。ラップに包んで冷蔵庫で30分ねかせます。
なお、ここで生地を休ませることで、グルテンが落ち着いて薄くのばしやすくなります。
-
生地を2〜3mmの厚さまで薄くのばし、直径10cmほどの円形に抜きます。金属製のカンノーロ用の筒に巻きつけ、合わせ目を卵白で留めます。
この筒がなければ皮を巻けません。太さ1.5cmほどの筒状の道具を用意することが、カンノーロ作りの出発点になります。
-
170〜180℃に熱した揚げ油で、2〜3本ずつ揚げます。 表面に気泡が出て、全体がきつね色になったら引き上げます。完全に冷めるまで触らず、冷めてから筒を静かに引き抜きます。
熱いうちに筒を外そうとすると、皮が割れてしまいます。焦らず冷ますことが、パリッとした形を保つ秘訣です。
-
リコッタ(500g)を目の細かいザルで裏ごしします。 粉糖(150g)を加えてなめらかに混ぜ、チョコチップ(70g)と刻んだ砂糖漬けオレンジピール(40g)を加えます。
裏ごしは面倒に感じるかもしれませんが、これを省くと詰め物がざらついた食感になり、リコッタ本来のなめらかさが失われます。
-
食べる直前に、絞り袋でクリームを皮の両端から詰めます。 詰めたらすぐに、両端にピスタチオ(適量)とドレンチェリーを飾り、仕上げに粉糖をふります。
カンノーロは詰めた瞬間から皮が湿気を吸い始めます。だからこそシチリアの菓子店も、注文を受けてから詰めるのです。
⚠️ やってはいけないこと
- 前もって詰めておかない。 皮がリコッタの水分を吸い、独特の食感が数十分で失われます。
- リコッタを水切りせずに使わない。 水分が多いまま使うと、詰めたそばから皮がふやけます。
- 油の温度が低いまま揚げない。 皮が気泡立たずに油を吸い込み、重たくべたついた仕上がりになります。
カンノーロの骨格はシンプルです。生地を揚げて筒状の皮を作り、水切りしたリコッタのクリームを詰める。日本のスーパーの材料と手作りの型でも、この骨格さえ守れば本場に近い一皿になります。
主な変更点
| L1からの変更点 | 理由 |
|---|---|
| ラード → 無塩バター(溶かして使用) | 日本のスーパーで手に入りやすい |
| マルサラ酒 → 辛口シェリー酒 | 酒精強化ワインで香りの系統が近い |
| 金属製の筒 → アルミホイルを巻いた自作の筒 | 専用の型が日本の家庭にはまずないため |
| 羊乳のリコッタ → 牛乳のリコッタチーズ | 輸入食材コーナーで入手しやすい |
材料(4人分:調理時間90分)
| 材料(JP) | 元の名前(IT) | 分量 | どこで買えるか | 代用 |
|---|---|---|---|---|
| 薄力粉 | Farina 00 | 250g | どこでも | — |
| 無塩バター | Strutto | 25g(溶かす) | どこでも | — |
| グラニュー糖 | Zucchero | 15g | どこでも | — |
| 塩 | Sale | ひとつまみ | どこでも | — |
| 辛口シェリー酒 | Vino Marsala | 70ml | 輸入食材コーナー、酒売り場 | 白ワイン70ml+はちみつ小さじ1 |
| 白ワインビネガー | Aceto di vino bianco | 小さじ1 | どこでも | 米酢 |
| 卵白 | Albume | 1個分 | どこでも | — |
| 揚げ油 | Olio per friggere | 適量 | どこでも | — |
| リコッタチーズ | Ricotta di pecora | 500g | チーズ売り場、輸入食材コーナー | カッテージチーズ(裏ごしする) |
| 粉糖 | Zucchero a velo | 150g | 製菓材料売り場 | — |
| チョコチップ | Gocce di cioccolato | 70g | 製菓材料売り場 | — |
| ドライオレンジピール(洋酒漬け) | Canditi | 40g | 製菓材料売り場 | ドレンチェリーのみじん切り |
| 刻みピスタチオ | Pistacchio di Bronte | 20g | 輸入食材・ナッツコーナー | 刻みアーモンド |
| ドレンチェリー | Ciliegie candite | 12個 | 製菓材料売り場 | — |
作り方
-
薄力粉(250g)に塩(ひとつまみ)とグラニュー糖(15g)を混ぜ、溶かしバター(25g)を加えて全体になじませます。シェリー酒(70ml)とビネガー(小さじ1)を少しずつ加え、まとまりのある固めの生地にします。ラップに包み、冷蔵庫で30分休ませます。
バターを使う生地はラードよりもややべたつきやすいので、打ち粉を多めに使うと扱いやすくなります。
-
アルミホイルを2〜3重に巻いて、太さ1.5cmほどの筒を12本作ります。 生地を2〜3mmの厚さにのばし、直径10cmの円形にカットして筒に巻きつけ、卵白で合わせ目を留めます。
生地を薄くのばして巻き、油で揚げる工程は、春巻きの皮を薄くのばして具を巻くときの感覚に近いものがあります。破れない厚さを指先で覚えるまで、数枚は練習のつもりで試してみてください。
-
170〜180℃の揚げ油で2〜3本ずつ揚げます。 表面に気泡が出てきつね色になったら引き上げ、完全に冷めてから筒を抜きます。
なお、揚げたては香ばしくても、時間が経つと湿気を吸って食感が変わります。天ぷらの衣が揚げたてだけパリッとしているのと同じ理屈です。
-
リコッタチーズ(500g)はキッチンペーパーを敷いたザルにのせ、冷蔵庫で一晩水切りしておきます。 使う直前に目の細かいザルで裏ごしし、粉糖(150g)を加えてなめらかに混ぜ、チョコチップ(70g)と刻んだドライオレンジピール(40g)を加えます。
この水切りは、水切りヨーグルトを作るときと同じ発想です。水分を抜くほど、コクのある濃いクリームに仕上がります。
-
食べる直前に、絞り袋でクリームを皮の両端から詰めます。 両端に刻みピスタチオとドレンチェリーを飾り、粉糖をふって仕上げます。
ヒント&コツ
- 皮だけなら、揚げたあと密閉容器に入れて常温で2〜3日保存できます。詰めるのは食べる直前だけを守ってください。
- 生地は作り置きして冷凍しておくと、思い立ったときに揚げるだけで済みます。
- アルミホイルの筒は太さを均一にすると、皮の厚みがそろって揚げ上がりが安定します。
日本のキッチンで手作りした筒とスーパーの材料でも、ここまでくれば十分にカンノーロです。次にシチリアを訪れることがあれば、街角の菓子店で注文してみてください。詰めたてのひと口が、あなたの台所の記憶と静かに重なるはずです。
よくある質問
Q. カンノーロ専用の型がなくても作れますか? アルミホイルを2〜3重に巻いて自作した筒で代用できます。太さを均一にそろえることが、きれいな仕上がりのコツです。
Q. どのくらい日持ちしますか? 皮だけなら密閉容器で常温2〜3日ほど。ただしリコッタを詰めたあとは数十分で食感が変わり始めるので、詰めたらすぐに食べきるのが前提です。
Q. 冷凍できますか? 皮は揚げたあと未使用のまま冷凍できます。リコッタのクリームは冷凍すると水分が分離するので、冷凍には向きません。
Q. 前日に準備しておけますか? 生地と皮は前日に作っておけます。リコッタも一晩水切りしておくとちょうどよいので、水切りとクリーム作りまでは前日に進め、詰めるのは当日にしてください。
Q. リコッタが手に入らない場合は? カッテージチーズを裏ごしして使うと近い食感になります。ただし羊乳のリコッタ特有のコクは出ません。

