マッケローニ・アッラ・キタッラ
アブルッツォ生まれの手打ちパスタ、マッケローニ・アッラ・キタッラを、専用の道具がなくても包丁一本で作ります。日本のスーパーで揃うひき肉と缶トマトで、素朴で力強いテラモ風の一皿に仕上げます。

- 調理時間
- 90分
- 人数
- 4名分
- 材料費
- 約¥1600
- 難易度
- ふつう

この料理について
キタッラの原型は16世紀、アブルッツォの移牧の民が携えていた「レントロチェレ」という溝の刻まれた麺棒にさかのぼるといわれます。18世紀になると、銅や真鍮の弦を木枠に張った「マッケルナーレ」という道具が生まれ、生地を弦の上で押し切るこの方法が丘陵地帯に広まりました。19世紀にはこの道具が花嫁道具の一つに数えられるほど、各家庭に根づいていきます。
道具そのものの発祥地については、テラモ県という説とキエティ県という説の両方が伝わっており、決着はついていません。ただ、テラモではこの麺を、牛ひき肉の小さな団子「パッロッティーネ」を浮かべたトマトソースで食べる習わしが特に強く残っており、今日の主役はこのテラモ風の一皿です。
3つのレシピ、ひとつの料理
同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。
キタッラの伝統的な生地は、デュラムセモリナ粉と卵のみ。生地を寝かせてから弦の上で切ることで、断面が四角く、表面がざらりとした麺になります。このざらつきこそがソースを抱き込む力の正体で、丸く滑らかな麺では同じようにはいきません。
材料(4人分)
- デュラムセモリナ粉(500g)
- 卵(5個)
- 牛ひき肉(300g)
- パルミジャーノ・レッジャーノ(30g、すりおろす)
- パン粉(30g)
- にんにく(1かけ、みじん切り)
- パセリ(少々、みじん切り)
- トマトのパッサータ(750ml)
- 玉ねぎ(1/2個)
- にんじん(1/4本)
- セロリ(1/4本)
- エキストラバージンオリーブオイル(大さじ2)
- 白ワイン(大さじ2)
- 塩・黒胡椒(各適量)
作り方
- デュラムセモリナ粉(500g)をこね台に山にし、中央にくぼみを作って卵(5個)を割り入れます。外側から少しずつ粉を崩し込み、なめらかになるまで15分ほどこねます。
- 生地を丸めてラップに包み、30分ほど寝かせます。なお、この工程を省くと生地が締まりすぎて、弦の上でうまく切れません。
- 生地を2〜3mmの厚さに伸ばし、キタッラの弦の上に乗せて麺棒で押します。弦が生地を切り分け、断面の四角い麺が下に落ちていきます。
- 牛ひき肉(300g)にパルミジャーノ・レッジャーノ(30g)、パン粉(30g)、にんにく、パセリ、塩を混ぜ合わせ、直径2cmほどの団子(パッロッティーネ)に丸めます。オリーブオイルで表面に焼き色がつくまで揚げ焼きにします。
- 玉ねぎ、にんじん、セロリをみじん切りにし、オリーブオイル(大さじ2)でしんなりするまで炒めます。白ワイン(大さじ2)を加えてアルコール分を飛ばし、トマトのパッサータ(750ml)を加えて弱火で40分ほど煮込みます。
- パッロッティーネをソースに加え、さらに15分ほど煮込みます。なお、団子が煮崩れない程度に、あまりかき混ぜすぎないことがポイントです。
- 麺をたっぷりの湯で1〜2分ほど茹で、湯を切ってソースと和えます。
⚠️ やってはいけないこと
- 乾燥パスタで代用しない:キタッラの断面のざらつきはソースを絡めるための構造そのもので、滑らかな乾麺では別の料理になってしまいます。
- 生地の寝かせを省かない:寝かせずに切ると弦に生地が絡みつき、断面がつぶれてしまいます。
- 団子を煮込みすぎない:長く煮込むと崩れて、ソースと団子の食感の対比が失われます。
主な変更点
日本の台所にキタッラという道具はまず見当たりません。ここでは包丁一本で、同じ四角い断面の麺を目指します。またパルミジャーノは粉チーズで、トマトのパッサータはカットトマト缶で代用します。
材料(4人分)
| 材料(JP) | 元の名前(IT) | 分量 | どこで買えるか | 代用 |
|---|---|---|---|---|
| 強力粉 | semola di grano duro | 400g | スーパーの製菓材料売り場 | セモリナ粉があれば本場に近づく |
| 卵 | uova | 4個 | どこでも | ー |
| 牛ひき肉 | carne di manzo macinata | 300g | スーパーの精肉コーナー | ー |
| 粉チーズ | parmigiano reggiano | 30g | どこでも | パルミジャーノなら風味が増す |
| パン粉 | pane grattugiato | 30g | どこでも | ー |
| にんにく | aglio | 1かけ | どこでも | チューブにんにく小さじ1 |
| パセリ | prezzemolo | 少々 | どこでも | 乾燥パセリでも可 |
| カットトマト缶 | passata di pomodoro | 800g(1缶) | どこでも | 裏ごしせずそのまま使用可 |
| 玉ねぎ・にんじん・セロリ | soffritto | 各適量 | どこでも | セロリを省いても味の骨格は保たれる |
| オリーブオイル | olio extravergine d'oliva | 大さじ2 | どこでも | ー |
| 白ワイン | vino bianco | 大さじ2 | どこでも | 省略可(コクはやや落ちる) |
| 塩・黒胡椒 | sale e pepe nero | 各適量 | どこでも | ー |
作り方
- ボウルに強力粉(400g)と卵(4個)を入れ、粉気がなくなるまで手でこねます。生地がまとまったら15分ほどこね、ラップに包んで30分ほど寝かせます。
- 生地を麺棒で2〜3mmの厚さに伸ばし、端から包丁で幅2〜3mmの棒状に切っていきます。手打ちうどんを包丁で切り分ける動きとよく似ていて、力を入れすぎず、まっすぐ下に刃を落とすのがコツです。
- 牛ひき肉(300g)に粉チーズ、パン粉、にんにく、パセリ、塩少々を混ぜ、直径2cmほどに丸めて団子にします。オリーブオイルを引いたフライパンで、転がしながらこんがりと焼き色をつけます。
- 玉ねぎ・にんじん・セロリのみじん切りをオリーブオイル(大さじ2)で炒め、白ワイン(大さじ2)を加えて煮立たせたら、カットトマト缶(800g)を加えます。ふつふつする程度の弱火で30分ほど煮込みます。
- 団子をソースに加え、15分ほど煮込みます。なお、味を見て塩気が足りなければここで調えます。
- 麺をたっぷりの湯で1〜2分ほど茹で、ソースと和えて器に盛ります。
ヒント&コツ
- 生地は包丁で切る前に軽く粉を振っておくと、麺同士がくっつきにくくなります。
- 団子とソースは前日に作っておくと、味がなじんでむしろおいしくなります。冷蔵で2日ほど保存できます。
- ソースだけなら冷凍もできます。団子は食感が変わるため、できれば食べる直前に加えるのがおすすめです。
日本のスーパーの材料でも、団子がソースにとろりと沈み、麺がその断面でしっかり受け止める――ここまでくれば十分にマッケローニ・アッラ・キタッラです。次にアブルッツォを訪れることがあれば、テラモの食堂で同じ一皿を頼んでみてください。あなたの台所の記憶と、静かに重なるはずです。
よくある質問
専用の道具(キタッラ)がなくても作れますか? はい。包丁で幅2〜3mmの棒状に切れば、断面の四角い食感に近づきます。手打ちうどんを切る要領で、まっすぐ刃を落とすのがポイントです。
生地や団子は前日に作っておけますか? 生地は寝かせた状態で冷蔵し、翌日に伸ばして切るのがおすすめです。団子とソースも前日に作っておくと、むしろ味がなじみます。
冷凍できますか? ソースと団子は冷凍できます。麺は生地の状態でも、切ってからでも冷凍可能ですが、茹で時間が短いため、食べる直前に仕上げるほうが食感を保てます。
子供でも食べられますか? はい。にんにくやパセリを控えめにすれば、子供にも食べやすい優しい味になります。
この料理に合うワインや副菜は? アブルッツォ産の赤ワイン、モンテプルチアーノ・ダブルッツォがよく合います。副菜には、軽く炒めた青菜や、シンプルな葉野菜のサラダがよく合います。
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