イカ墨のリゾット
日本の鮮魚コーナーのイカと市販のイカ墨パックで、ヴェネツィアの漁師町に伝わる黒いイカ墨リゾットに仕上げます。米一粒ずつに墨がまとわりつく、とろりとした本格的な口当たりまで再現します。

- 調理時間
- 70分
- 人数
- 4名分
- 材料費
- 約¥2000
- 難易度
- ふつう

この料理について
イカ墨のリゾットは、ヴェネツィアの漁師の台所から生まれた料理です。当時は捨てられることも多かったイカの墨を、色付けと旨み出しに使い、米と合わせて食べ応えのある一皿に仕立てました。海の恵みを余すことなく使い切る、その発想こそがこの料理の芯にあります。起源については、ヴェネツィア共和国の支配下にあったダルマチア(現在のクロアチア沿岸部)で生まれたという説と、ヴェネツィア本土の漁師料理として生まれたという説があり、どちらの立場にも一理あります。いずれにせよ、この一皿がアドリア海を挟んだ交易の記憶を今に伝えていることは確かです。
3つのレシピ、ひとつの料理
同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。
本場のイカ墨のリゾットを構成するのは、イカとその墨、リゾット用の米、そして魚のだし。数えるほどの材料で、海そのものの味を米に直接移し込む料理です。チーズは加えません。魚介の繊細な旨みを覆ってしまうからです。
材料(4人分)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| イカ(甲イカ、墨袋つき) | 600g |
| 玉ねぎ | 1/2個 |
| にんにく | 1かけ |
| エキストラバージンオリーブオイル | 大さじ4 |
| 白ワイン(辛口) | 100ml |
| 魚のだし | 1.2L |
| リゾット用の米(ヴィアローネ・ナーノまたはカルナローリ) | 320g |
| バター | 30g |
| パセリ(みじん切り) | 大さじ2 |
| 塩・黒胡椒 | 適量 |
作り方
- イカ(600g)は、胴の中の軟骨を引き抜き、内臓ごと墨袋を取り出します。墨袋は破らないよう、指先でそっと引き離すのがポイントです。取り出した墨袋は別の器に入れておきます。なお、墨袋は薄い膜に包まれているだけなので、力を入れすぎるとすぐに破れてしまいます。
- 胴と足を洗って水気を拭き取り、胴は1cm幅の輪切りに、足は食べやすい大きさに切り分けます。
- 玉ねぎ(1/2個)をみじん切りにし、にんにく(1かけ)は潰します。鍋にオリーブオイル(大さじ2)を入れ、弱火で玉ねぎがしんなりと透き通るまで炒めます。炒めるというより、じっくり蒸らすくらいの弱い火加減がちょうどよい仕上がりです。
- イカ(600g)を加えて中火で軽く炒め合わせ、白ワイン(100ml)を注いでアルコール分を飛ばします。なお、ここで焦らず火を入れておくと、あとの煮込みでイカが締まりすぎずに仕上がります。
- 魚のだし(おたま2杯分ほど)を加え、ふたをして弱火で30分ほど、イカがやわらかくなるまで煮込みます。
- 別の鍋にオリーブオイル(大さじ2)を熱し、米(320g)を加えて中火で炒めます。米粒の縁が透き通ってきたら、取り出しておいた墨袋の墨を加え、全体を黒く染めます。
- 熱い魚のだしをおたま1杯ずつ加えながら、木べらで絶えず混ぜます。だしが米に吸われたら、また1杯足します。これを18分ほど繰り返します。
- 途中でイカとその煮汁を米に加え合わせ、いっしょに火を入れていきます。米に軽く芯が残る、アルデンテの状態で火を止めます。
- バター(30g)を加え、鍋を軽く揺すりながら手早く和えます。鍋を傾けると表面がゆっくり波打つくらいのとろみが目安です。パセリ(大さじ2)を散らし、塩・黒胡椒で味を調えます。
⚠️ やってはいけないこと
- 墨袋を急いで取り出す。 力を入れすぎると簡単に破れ、早い段階で墨が飛び散ってしまいます。指先でそっと引き離すのがコツです。
- イカを煮込みすぎる、または煮込み時間を削る。 イカは弱火でじっくり火を入れて初めてやわらかくなります。急ぐと硬く縮んでしまいます。
- チーズを加える。 魚介のリゾットにチーズを合わせないのが本場の考え方です。墨の香りとイカの旨みが隠れてしまいます。
日本の鮮魚コーナーのイカと市販のイカ墨パックで、本場のイカ墨のリゾットにひけを取らない一皿が作れます。変わるのは下ごしらえの手間くらいで、考え方はそのままです。
主な変更点
- 生のイカから墨袋を取り出す代わりに、パック入りのイカ墨を使います。下ごしらえがぐっと楽になり、色と香りも十分に再現できます。
- 本場のヴィアローネ・ナーノやカルナローリの代わりに、輸入食材店で買えるリゾット用の米を使います。日本の米とは粘りの質が違うため、代用はおすすめしません。
- 白ワインがなければ、料理酒でも代用できます。風味は少しやわらぎますが、省略しても作れます。
材料(4人分)
| 材料(JP) | 元の名前(IT) | 分量 | どこで買えるか | 代用 |
|---|---|---|---|---|
| イカ(甲イカが理想) | seppia | 600g | 鮮魚コーナー | 普通のイカでも作れる(風味はやや軽くなる) |
| イカ墨(パック) | nero di seppia | 2パック | 輸入食材店・オンライン | — |
| リゾット用の米 | riso Vialone Nano/Carnaroli | 320g | 輸入食材コーナー | — |
| 玉ねぎ | cipolla | 1/2個 | どこでも | — |
| にんにく | aglio | 1かけ | どこでも | チューブにんにく |
| 白ワイン | vino bianco | 100ml | 酒売り場 | 料理酒 |
| 魚のだし | brodo di pesce | 1.2L | 魚売り場・コンソメ売り場 | 顆粒コンソメとお湯 |
| オリーブオイル | olio extravergine | 大さじ4 | 油売り場 | — |
| バター | burro | 30g | 乳製品コーナー | 省略可 |
| パセリ | prezzemolo | 大さじ2 | 野菜売り場 | 乾燥パセリ |
| 塩・黒胡椒 | sale e pepe | 適量 | どこでも | — |
作り方
- イカ(600g)は下処理済みのものを使うと手軽です。胴は1cm幅の輪切りに、足は食べやすく切り分けます。イカ墨はパック(2パック)を用意しておきます。
- 玉ねぎ(1/2個)をみじん切りにし、オリーブオイル(大さじ2)でしんなりするまで弱火で炒めます。
- イカを加えて軽く炒め、白ワイン(100ml)を加えてアルコールを飛ばしたら、魚のだしを加えてふたをし、弱火で30分ほど煮ます。
- 別の鍋でオリーブオイル(大さじ2)を熱し、米(320g)を炒めます。縁が透き通ってきたら、イカ墨(2パック)を加えて米全体を黒く染めます。
- 熱いだしをおたま1杯ずつ加えながら混ぜていきます。だしを少しずつ吸わせて米を育てていく感覚は、雑炊を仕上げるときの手つきに近いかもしれません。これを18分ほど続けます。
- 途中でイカと煮汁を米に戻し入れ、いっしょに火を通します。米に軽く芯が残るくらいで火を止めます。
- バター(30g)を加えて手早く和え、パセリ(大さじ2)を散らして塩・黒胡椒で味を調えます。
ヒント&コツ
- だしは必ず温かい状態で加えます。冷たいだしを注ぐと米の温度が下がり、火の通りにムラが出ます。
- イカ墨のパックは開封時に指や調理台を黒く染めるので、使い捨て手袋があると安心です。
- 物足りなく感じるかもしれませんが、チーズを振らずに仕上げるほうが、イカの風味と墨の塩気がまっすぐ伝わります。
スーパーの材料でも、ここまでくれば十分にイカ墨のリゾットです。次にヴェネツィアの路地裏を歩くことがあれば、小さな食堂でこの一皿を頼んでみてください。あなたの台所で覚えた墨の香りと、静かに重なるはずです。
よくある質問
イカ墨は生のものでなくても大丈夫ですか? はい、パック入りのイカ墨で問題なく作れます。手に入りにくい生の墨袋を探すよりも、断然手軽です。
リゾット用の米が手に入らないときは? 日本のうるち米で代用すると、粘りの質が違うため仕上がりがべたついてしまいます。輸入食材店やオンラインでの取り寄せをおすすめします。
どのくらい日持ちしますか?冷凍はできますか? リゾットは作りたてが一番おいしい料理です。冷蔵なら翌日まで、風味は落ちますが冷凍も可能です。解凍するときは、だしを少し足して温め直してください。
子どもでも食べられますか? はい。見た目ほど味は強くなく、イカの旨みとほのかな塩気が中心です。白ワインのアルコールをしっかり飛ばせば、小さなお子さんにも出しやすい味になります。
白ワインがないときはどうすればいいですか? 省略しても作れます。風味の複雑さは少し落ちますが、イカ自体の旨みとイカ墨の塩気で十分においしく仕上がります。
関連レシピ

ティラミスのレシピ|トレヴィーゾ生まれの本格デザート
本場トレヴィーゾ発祥の本格ティラミスを、日本のスーパーで手に入る材料で再現します。コーヒーに浸したサヴォイアルディと、生の卵黄で仕立てたマスカルポーネのクリームを重ねた、軽やかで濃厚な一皿です。

トルテッリーニ・イン・ブロード|本場ボローニャ伝統のレシピ
ボローニャで公証人立会いのもと配合が定められた、豚ロースと生ハム、モルタデッラを詰めたトルテッリーニ。日本のスーパーと輸入食材店で揃う材料で、牛肉と鶏でとった澄んだブロードにひたひたと浮かぶ、あの一皿に仕上げます。

ストランゴッツィのレシピ|黒トリュフの本格ウンブリアパスタ
ウンブリア州ノルチャ発祥、卵を使わない素朴な手打ち生地に黒トリュフを合わせる本格パスタです。日本での黒トリュフの選び方と、香りを損なわない扱い方まで丁寧に紹介します。