ミラノ風オッソブーコ
オッソブーコは、骨付きの仔牛のすねをバターと白ワインでじっくり煮て、グレモラータで仕上げるミラノの郷土料理です。仔牛が手に入らないときの牛すね肉での作り方から、トマトを入れるかどうかの違い、骨髄の楽しみ方まで紹介します。
公開日

- 調理時間
- 150分
- 人数
- 2名分
- 材料費
- 約¥2000
- 難易度
- ふつう
- カロリー(1人分)
- 約520kcal
この料理に合うワイン
Cantina ワインの早見表 →ヴァルテッリーナ・ スペリオーレ
ルビーからガーネット色。辛口で、なめらかな口当たりの赤です。
- 産地
- ロンバルディア州
- ぶどう品種
- ネッビオーロ(キアヴェンナスカ)
- ニーノ・
ネグリ「マゼール」Nino Negri Mazèr - マメテ・
プレヴォスティーニ「ガロフ(グルメッロ)」Mamete Prevostini Garof (Grumello)
マゼール ヴァルテッリーナ・ スペリオーレ
黒い果実と甘草、スパイスの香り。タンニンがなめらかな辛口の赤です。
- ぶどう品種
- ネッビオーロ(キアヴェンナスカ)
- 輸入元
- モンテ物産株式会社
ほどよい酸味となめらかなタンニンが、バターと白ワインで煮た肉のコクを受け止めます。
お酒は20歳になってから。

ミラノ風オッソブーコとは
鍋のふたを開けると、バターと白ワインの湯気の向こうに、輪切りの骨が並んでいます。骨の真ん中の穴には、煮えてやわらかくなった骨髄が、とろりとのぞいています。オッソブーコは、仔牛のすねを骨ごと輪切りにして、ゆっくり煮込むミラノの料理です。名前は「穴のあいた骨」という意味で、オッソブッコと書かれることもあります。今日はその作り方を、なぜそうするのかも含めて、いっしょに見ていきましょう。
オッソブーコは、仔牛のすね(なかでも後脚のものがよいとされます)を、骨の真ん中に穴が見える厚さ3〜4cmの輪切りにして煮る料理です。骨の穴に詰まった骨髄が煮汁に溶け出して、ソースにコクととろみを与えます。だから、骨を外さないことが、この一皿の要になります。ミラノ市は2007年に、この料理を市の地域呼称に認定しています。
古くから食べられていたという説もありますが、書かれた記録が多く残るのは19世紀以降です。ミラノの市民の家で、日曜の食卓に出る料理だったとも言われます。定番の添え物は、サフランで黄色く仕上げたミラノ風リゾットで、一枚の皿に並べて出されます。ただしリゾットは別の料理なので、このページでは添え物として触れるだけにします。
トマトの扱いは、いまも意見が分かれるところです。トマトを加えない「白い」煮込みが古い姿とされ、ここでの本格版もそちらを基準にします。いっぽう、昔の有名な家庭料理書にはトマトを使う作り方が載っていて、いまも両方の作り方が伝わっています。
調理の目安は、日常版が2時間30分ほどで、煮込みは牛すね肉で2時間です。仔牛を使う本格版は、煮込みが1時間から1時間半ほどで済みます。
3つのレシピ、ひとつの料理
同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。
オッソブーコの骨格は、仔牛のすねの輪切り、バター、白ワイン、ブロード、そして仕上げのグレモラータ(刻んだパセリ、にんにく、レモンの皮を合わせた香りづけ)です。肉には小麦粉を薄くまぶし、油ではなくバターで焼きつけます。トマトは加えず、肉と骨髄の味を、そのまま煮汁に移します。
材料(4人分)
| 材料 | 量 |
|---|---|
| 仔牛のすね(骨付き輪切り、厚さ3〜4cm) | 4枚(1枚350〜400gほど) |
| 小麦粉 | 30gほど |
| バター | 80g(焼く用50g、仕上げ用30g) |
| 玉ねぎ(みじん切り) | 1個(200gほど) |
| 白ワイン(辛口) | 150ml |
| ブロード(肉のだし、温めておく) | 500mlほど |
| 塩・黒胡椒 | 適量 |
| グレモラータ | |
| イタリアンパセリ | 15g |
| にんにく | 1かけ |
| レモンの皮(国産、黄色い部分) | 1個分 |
作り方
-
仔牛のすね(4枚)の周りの薄い膜に、浅く3か所ほど切り込みを入れます。水気をペーパーで拭き取ります。
なお、切り込みを入れるのは、煮ている間に膜が縮んで、肉が丸まるのを防ぐためです。骨の穴は傷つけないようにします。
-
バットに小麦粉(30g)を広げ、肉の両面に薄くまぶして、余分をはたき落とします。
ポイントは、粉を薄くつけることです。厚くつけると煮汁が重くなり、バターの風味が隠れてしまいます。
-
大きな浅鍋にバター(50g)を溶かし、玉ねぎ(200g)のみじん切りを弱火で、色づけないように透き通るまで炒めます。
なお、玉ねぎを色づけないのは、白く澄んだ煮汁に仕上げるためです。
-
玉ねぎの上に肉を並べ、中火で、片面4〜5分、薄く焼き色がつくまで焼きます。フォークで刺すと肉汁が逃げるので、返すときはトングかへらを使います。
-
白ワイン(150ml)を注ぎ、強めの中火で、アルコールの匂いが飛ぶまで煮立てます。塩と黒胡椒を適量加えます。
-
温めたブロード(500mlほど)を、肉の高さの半分ほどまで注ぎます。沸いたらふたをして弱火にし、1時間から1時間半、ときどき裏返しながら煮ます。煮汁が減ったら、温めたブロードを少しずつ足します。肉が骨から離れかけて、竹串がすっと通ったら煮上がりです。
なお、ブロードを温めて少しずつ足すのは、煮汁の温度を下げずに、ソースの濃さを保つためです。
-
煮上がる5分ほど前に、グレモラータを作ります。イタリアンパセリ(15g)とにんにく(1かけ)をみじん切りにし、レモンの皮(1個分)の黄色い部分をすりおろして混ぜます。バター(30g)とグレモラータを煮汁に入れて軽く混ぜ、ふたを取って、煮汁にとろみがつくまで少し煮ます。皿に盛り、煮汁をたっぷりかけます。
ポイントは、グレモラータを最後に入れることです。早く入れると、パセリの色と、レモンの皮の香りが飛んでしまいます。なお、火を止めてから、肉の上にふって仕上げる作り方もあります。アンチョビを刻み入れる家もあります。
⚠️ やってはいけないこと
- 骨を外さない: 骨の穴の骨髄が、煮汁にコクを与えます。骨を外すと、この料理の核になる味が失われます。
- ぐらぐら煮立てない: 強い火で煮ると、肉の繊維が縮んで固くなります。沸いたら弱火に落とし、静かに煮てください。
- 膜の切り込みを省かない: 切り込みがないと、焼いている間に肉が丸まり、焼き色にむらが出ます。
- グレモラータを早く入れない: 煮込みの途中で入れると、香りが飛んでしまいます。仕上げの直前が基本です。
日本の台所で作るときの壁は、仔牛の骨付きすねです。一般的なスーパーの精肉売り場には、まず並びません。この日常版では、売り場で見つかる牛すね肉(骨なし)を使い、白ワインとバターでじっくり煮て、最後にグレモラータで香りを重ねます。骨髄がないぶん、本来とは味が違います。それでも、考え方はそのまま生きます。日本で手に入る材料で、ミラノの白い煮込みに近づける一皿です。
主な変更点
- 仔牛の骨付きすね → 牛すね肉(骨なし、厚さ4cmほど)。成牛のすねは仔牛より肉の味が強く、筋が多いぶん、やわらかくなるまで2時間ほどかかります。骨髄がないので、煮汁のコクは控えめになります。精肉店で骨付きの輪切り(厚さ3〜4cm)を頼める場合は、そちらが本来の姿に近づきます
- ブロード → 顆粒コンソメを湯で溶いたもの。肉のうまみは軽くなり、塩けが強く出やすいので、塩は味をみながら加えます
- レモンの皮 → 国産で防カビ剤不使用のもの。皮をそのまま使うので、輸入のレモンを使うときは、皮をよく洗います
- イタリアンパセリ → なければ普通のパセリ。香りはやや穏やかになります
材料(2人分:調理時間2時間30分)
| 材料(JP) | 元の名前(IT) | 分量 | どこで買えるか | 代用 |
|---|---|---|---|---|
| 牛すね肉(骨なし、厚さ4cmほど) | ossobuco (stinco di vitello) | 400g(200g×2切れ) | 精肉コーナー | 仔牛のすね(骨付き輪切り)。精肉店、通販 |
| 薄力粉 | farina | 大さじ2(18g) | どこでも | — |
| バター | burro | 40g(炒め用25g、仕上げ用15g) | 乳製品売り場 | 有塩バターでも可(塩けが加わるので、塩は控えめに) |
| 玉ねぎ | cipolla | 1/2個(100g) | どこでも | — |
| 白ワイン(辛口) | vino bianco | 100ml | 酒売り場 | — |
| 顆粒コンソメ | brodo di carne | 小さじ1(約3g)を湯300mlに溶く | 調味料売り場 | — |
| 塩・黒胡椒 | sale e pepe | 少々 | どこでも | — |
| グレモラータ用 | ||||
| イタリアンパセリ | prezzemolo | 10g | 野菜売り場(ハーブのパック) | 普通のパセリ(香りはやや穏やか) |
| にんにく | aglio | 1/2かけ | どこでも | — |
| レモンの皮(国産) | scorza di limone | 1/2個分 | 果物売り場 | 輸入のレモンは、皮をよく洗って使う |
作り方
-
牛すね肉(200g×2切れ)の表面の筋や膜に、浅く3か所ほど切り込みを入れます。厚さがそろわないときは、タコ糸を1周巻いて、形を整えます。
煮豚用の肉を縛るのと同じ要領です。骨がないぶん、糸で押さえておくと、2時間煮ても形が崩れません。
-
肉の水気をペーパーで拭き取り、薄力粉(大さじ2)を全体に薄くまぶして、余分をはたき落とします。
なお、粉は、焼き色をつけやすくして、煮汁にほんの少しとろみを与えます。
-
厚手の鍋にバター(25g)を溶かし、玉ねぎ(1/2個)のみじん切りを弱火で、色づけないように透き通るまで炒めます。
ビーフシチューのように飴色まで炒めないのが、ここでは大きな違いです。白く澄んだ煮汁に仕上げるためです。
-
玉ねぎを鍋の端に寄せ、肉を入れて中火で、片面4〜5分、薄く焼き色がつくまで焼きます。
-
白ワイン(100ml)を注ぎ、強めの中火で、アルコールの匂いが飛ぶまで煮立てます。顆粒コンソメ(小さじ1)を湯(300ml)に溶いたものを、肉の高さの半分ほどまで注ぎ、黒胡椒を少々ふります。塩は、煮上がりに味をみて足します。
コンソメには塩けがあるので、最初に塩を入れないのがポイントです。
-
沸いたらふたをして弱火にし、2時間ほど、ときどき裏返しながら煮ます。煮汁が減ったら、湯を少し足します。竹串がすっと通り、箸で押すと崩れるほどやわらかくなったら、煮上がりです。
牛すじ煮込みと同じで、すね肉は、ゆっくり火を通すと筋がゼラチン質になって、とろけるようなやわらかさになります。
-
煮上がる5分ほど前に、グレモラータを作ります。イタリアンパセリ(10g)とにんにく(1/2かけ)をみじん切りにし、レモンの皮(1/2個分)の黄色い部分をすりおろして混ぜます。バター(15g)とグレモラータを煮汁に入れて軽く混ぜ、ふたを取って、煮汁にとろみがつくまで少し煮ます。タコ糸を外して皿に盛り、煮汁をたっぷりかけます。
グレモラータは、最後に入れるのがポイントです。早く入れると、パセリの色と香りが飛んでしまいます。
ヒント&コツ
- 煮汁が多く残ったときは、肉をいったん取り出し、鍋を強めの中火にかけて煮詰めます。とろみがついたら、肉を戻して温めます。
- 骨付きの輪切りが手に入ったときも、作り方は同じです。骨髄は、細いスプーンですくって、煮汁といっしょに食べます。
- 付け合わせは、ミラノ風リゾットが定番です。マッシュポテトや、煮汁をぬぐうパンもよく合います。
牛すね肉でも、バターと白ワインでゆっくり煮て、最後にレモンとパセリの香りを重ねれば、ミラノのオッソブーコの考え方は十分に味わえます。次にミラノを訪れることがあれば、食堂の片隅で、同じ一皿を頼んでみてください。骨の真ん中の骨髄をすくうひと口が、あなたの台所の記憶と静かに重なるはずです。
よくある質問
仔牛のすねが手に入らないときは、牛すね肉でも作れますか?
作れます。仔牛の骨付きすねは、一般的なスーパーでは見かけず、手に入るのは、扱いのある精肉店や通販に限られます。そこで、売り場で見つかる牛すね肉(骨なし)を使い、煮込みを2時間ほどにのばします。骨髄がないぶん、煮汁のコクや口当たりは、本来と違います。精肉店で骨付きの輪切り(厚さ3〜4cm)を頼める場合は、そちらがより近い形になります。
トマトを入れてもいいですか?
入れても大丈夫です。トマトを加える作り方も、昔の料理書や、いまのミラノの家庭に伝わっています。ここでは、古い姿とされる「白い」煮込みを基準にしているので、トマトは入れていません。入れるときは、カットトマト缶を大さじ2〜3ほど、ブロードといっしょに加えます。
グレモラータは、いつ入れるのですか? アンチョビは入れますか?
煮上がる5分ほど前に、煮汁へ混ぜ入れます。火を止めてから、肉の上にふる作り方もあります。アンチョビを刻んで加える作り方もありますが、ここでは、パセリ、にんにく、レモンの皮の三つを基本にしています。
骨髄は、どうやって食べるのですか?
骨の穴の骨髄を、細くて小さなスプーンですくって、煮汁やパンといっしょに食べます。ミラノでは、このスプーンを「税金の取り立て役」と呼んで、冗談にすることがあります。
この料理に合うワインは?
ロンバルディア州の赤、ヴァルテッリーナ・スペリオーレがよく合います。ネッビオーロという品種から造る辛口の赤で、酸味とタンニン(渋み)が穏やかなので、バターと白ワインで煮た肉のコクを受け止めます。レモンとパセリの香りも、じゃましません。
前日に作っておけますか? 冷凍はできますか?
前日に作れます。グレモラータは食べる直前に加えるので、煮込みの段階までを作り、温め直してから仕上げてください。粗熱が取れたら冷蔵庫に入れ、冷蔵で2日以内に食べきります。煮汁ごと冷凍すれば、2週間ほど保存できます。冷蔵庫でゆっくり解凍し、中心まで十分に熱くなるよう温め直してから、グレモラータを加えます。
子供でも食べられますか?
肉はやわらかく煮えているので、食べられます。ワインは長く煮るので、アルコールの大半は飛びますが、完全にゼロにはなりません。気になるときは、白ワインのかわりに、同じ量のブロードで煮てください。にんにくが強いと感じる場合は、グレモラータの量を控えめにします。
代用食材ガイド
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