Trentino-Alto Adige · トレンティーノ

アップルシュトゥルーデル

Strudel di mele

透けるほど薄く手で伸ばした生地で、りんごとバターで炒ったパン粉を巻いて焼く南チロルの伝統菓子。日本で手に入る紅玉と強力粉で、薄い皮が幾重にも重なるアップルシュトゥルーデルに仕上げます。

公開日

皿にのせた手作りのアップルシュトゥルーデル。切り口に紙のように薄い生地が幾重にも巻き込まれ、りんごがのぞき、表面に粉糖がふられている
調理時間
120分
人数
8名分
材料費
約¥2000
難易度
本格的
カロリー(1人分)
約390kcal

この料理に合うワイン

Cantina →
本場イタリアの一本
白・甘口 · DOC

アルト・アディジェ・モスカート・ジャッロ

Alto Adige Moscato Giallo (dolce)

淡い黄色で、ナツメグや桃、バラの香り。穏やかな甘さと酸のある白です。

産地
トレンティーノ州
ぶどう品種
モスカート・ジャッロ
造り手の例
  • カンティーナ・トラミン「モスカート・ジャッロ・アマービレ」
  • カンティーナ・カルダーロ「モスカート・ジャッロ・アマービレ」
日本で買える一本
スパークリング・甘口 · イタリア・ピエモンテ州
サンテロ

天使のアスティ

Santero Asti Degli Angeli

マスカットの華やかな香りと果実味をもつ、アルコール7.5%の甘口の泡です。

ぶどう品種
モスカート・ビアンコ
輸入元
株式会社モトックス
ワインショップや輸入食材店で味わいの近い一本
合わせる理由

ナツメグや桃の香りが、りんごとシナモンの香りに重なります。穏やかな甘さを酸味が支え、バターの後味も軽くします。

お酒は20歳になってから。

布巾の上に伸ばした生地にバターで炒ったパン粉を広げ、薄切りのりんごを手でのせていくアップルシュトゥルーデルの仕込み

アップルシュトゥルーデルとは

南チロルの菓子店や山小屋のショーケースには、粉糖をまとった細長い菓子がよく並んでいます。切り口をのぞくと、紙のように薄い生地が何重にも巻き込まれ、そのあいだからりんごとバターで炒ったパン粉が顔を出します。イタリアではストゥルーデル・ディ・メーレと呼ばれるアップルシュトゥルーデル。りんごの収穫を終えた秋から冬にかけて、家族が集まる食卓によく似合う一皿です。今日はその作り方を、なぜそうするのかも含めて、いっしょに見ていきましょう。

シュトゥルーデルという名前は、渦を巻くことを表す古いドイツ語に由来するといわれ、切り口に現れる渦巻きをそのまま指しています。知られている最古のシュトゥルーデルのレシピは、ウィーンの図書館に残る1696年の手書きの料理帳にある、牛乳とクリームを使ったもの。生地を手で引き伸ばしてりんごを包む「引き伸ばし式」のシュトゥルーデルは、1827年のウィーンの料理書に登場します。薄く伸ばす生地の技術は、オスマン帝国の時代にバルカン半島やハンガリーを経てウィーンへ伝わったという説がありますが、はっきりした記録は残っていません。

かつてオーストリアのチロルの一部だった南チロル(ボルツァーノ自治県)では、シュトゥルーデルは国の伝統食品リストに登録された郷土の菓子です。この州はイタリア有数のりんごの産地でもあり、トレント自治県のノン渓谷のりんごは原産地呼称保護の認定を受け、品種はゴールデン・デリシャス、レネッタ・カナダ、レッド・デリシャスの三つに限られています。収穫は8月から11月前半にかけての手摘みです。

クリスマスの菓子としては、ドライフルーツを使ったツェルテンが知られています。シュトゥルーデルは季節を問わず焼かれますが、新しいりんごが出そろう秋から冬は、やはりこの菓子がいちばん似合う季節です。なお南チロルでは、バターと卵にベーキングパウダーを加えたタルト生地で包む、ほろりと崩れる食感のシュトゥルーデルも家庭や菓子店で広く作られています。ここでは、ウィーンから伝わった古い形である、手で伸ばす生地の作り方を本格レシピとして紹介します。

3つのレシピ、ひとつの料理

同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。

アップルシュトゥルーデルの骨格は、粉と水と油だけの生地、薄切りのりんご、そしてバターで炒ったパン粉の三つです。生地には卵も砂糖も入れず、そのかわり向こうが透けるほど薄く伸ばします。りんごから出る果汁はパン粉が受け止め、薄い生地は焼くとパリッと香ばしい皮になって、何層にも重なります。

材料(8人分・長さ約40cmの1本分)

材料分量
生地
小麦粉(イタリアの00番)200g
ぬるま湯100ml
植物油大さじ1と1/2
塩ひとつまみ
打ち粉適量
フィリング
りんご(レネッタ・カナダ種など酸味のある品種)1kg(皮と芯を除く前の重さ)
レモン1個(皮のすりおろしと果汁大さじ2)
グラニュー糖70g
シナモン(パウダー)小さじ1
レーズン60g
ラム酒(レーズンを漬ける用)大さじ3
松の実40g
パン粉(細かい乾燥パン粉)80g
バター(パン粉を炒る用)40g
溶かしバター(生地に塗る用)60g
粉糖(仕上げ用)適量

作り方

1. 生地をこねて休ませる

小麦粉(200g)と塩(ひとつまみ)をボウルに入れ、ぬるま湯(100ml)と植物油(大さじ1と1/2)を加えて混ぜます。台に出し、表面がなめらかで手につかなくなるまで10分ほどこねます。丸めて表面に油を薄く塗り、ラップをかけて室温で30分以上休ませます。

なお、休ませることで生地のグルテンがゆるみ、伸ばしたときに縮みにくくなります。

2. りんごとレーズンを準備する

レーズン(60g)はラム酒(大さじ3)に漬けておきます。りんご(1kg)は皮をむいて芯を取り、4等分してから2〜3mmの薄切りにし、レモン果汁(大さじ2)をまぶします。

3. パン粉をバターで炒る

フライパンにバター(40g)を溶かし、パン粉(80g)を弱めの中火で、きつね色になって香ばしい香りが立つまで炒ります。皿に移して冷まします。

なお、このパン粉が、焼いているあいだにりんごから出る果汁を吸い、底の生地がふやけるのを防ぎます。

4. フィリングを合わせる

巻く直前に、りんごにすりおろしたレモンの皮、グラニュー糖(70g)、シナモン(小さじ1)、汁気をきったレーズン、松の実(40g)を加えて混ぜます。

なお、砂糖を早く混ぜておくと、りんごから果汁が出すぎてしまいます。

5. 布の上で生地を伸ばす

テーブルに大きめの布を広げ、打ち粉をたっぷりふります。生地をのせてめん棒でひと回り大きくのばし、両手の甲を生地の下に差し入れて、中心から外へ少しずつ引き伸ばします。下に敷いた布の模様が透けて見えるくらいまで、全体を均一に薄くし、縁の厚い部分は切り落とします。

なお、指先ではなく手の甲を使うと、生地に穴をあけにくくなります。

6. 具をのせて巻く

生地の表面に溶かしバター(60g)の一部を刷毛で塗り、手前側の3分の2ほどに炒ったパン粉を広げます。その手前寄りに、フィリングを帯状にのせます。両端の生地を内側に折り込み、布を持ち上げながら、手前から向こうへ転がすように巻きます。

なお、巻き終わりを下にして、オーブンシートを敷いた天板へ布から転がして移します。天板に収まらない長さなら、U字に曲げてのせます。

7. 焼いて仕上げる

表面に溶かしバターを塗り、180℃に予熱したオーブンで50分ほど焼きます。途中で一度バターを塗り重ね、全体が濃いきつね色になったら取り出します。粗熱が取れたら粉糖をふり、温かさが少し残るうちに切り分けます。

⚠️ やってはいけないこと

生地を休ませずに伸ばす

生地の弾力が強いまま引っぱると縮んで戻り、薄くなる前に破れてしまいます。

パン粉を省く

りんごの果汁で底の生地がふやけ、薄い層がつぶれて重たい食感になります。

りんごを厚く切る

焼いているあいだに火が通りきらず、薄い生地との食感がつり合いません。


よくある質問

Q. 生地を手で伸ばすのが不安です。市販のパイシートで作れますか? A. 作れますが、別の食感になります。冷凍パイシートは層がふくらんで、さくさくとした菓子に仕上がります。イタリアでも手軽な作り方として見かけますが、紙のように薄い皮が重なる軽さは、手で伸ばす生地でしか出ません。

Q. 南チロルで食べたシュトゥルーデルは、生地がタルトのようでした。どちらが本物ですか? A. どちらも現地のシュトゥルーデルです。南チロルでは、バターと卵にベーキングパウダーを加えたタルト生地で包む作り方も広く親しまれていて、ほろりと崩れる食感が特徴です。手で伸ばす生地は、ウィーンから伝わった古い形です。

Q. どのくらい日持ちしますか? 冷凍できますか? A. 焼いた当日がいちばんおいしく、残りはラップで包んで冷蔵で2日ほどです。冷凍もできますが、解凍すると皮がしんなりしやすいので、オーブントースターで温め直してから食べてください。

Q. 子供でも食べられますか? A. ラム酒はレーズンを漬けるだけですが、焼いてもアルコールが完全に抜けるとは限りません。お子さん向けには、レーズンをぬるま湯で戻してください。

Q. この料理に合うワインは? A. アルト・アディジェ産の甘口のモスカート・ジャッロがよく合います。黄色いマスカットから造られる白で、華やかな香りが、りんごとシナモンの香りに重なります。

代用食材ガイド