アップルシュトゥルーデル
透けるほど薄く手で伸ばした生地で、りんごとバターで炒ったパン粉を巻いて焼く南チロルの伝統菓子。日本で手に入る紅玉と強力粉で、薄い皮が幾重にも重なるアップルシュトゥルーデルに仕上げます。
公開日
- 調理時間
- 120分
- 人数
- 8名分
- 材料費
- 約¥2000
- 難易度
- 本格的
- カロリー(1人分)
- 約390kcal
この料理に合うワイン
Cantina ワインの早見表 →アルト・ アディジェ・ モスカート・ ジャッロ
淡い黄色で、ナツメグや桃、バラの香り。穏やかな甘さと酸のある白です。
- 産地
- トレンティーノ州
- ぶどう品種
- モスカート・ジャッロ
- カンティーナ・
トラミン「モスカート・ ジャッロ・ アマービレ」Cantina Tramin Moscato Giallo amabile - カンティーナ・
カルダーロ「モスカート・ ジャッロ・ アマービレ」Kellerei Kaltern (Cantina Caldaro) Moscato Giallo amabile
天使のアスティ
マスカットの華やかな香りと果実味をもつ、アルコール7.5%の甘口の泡です。
- ぶどう品種
- モスカート・ビアンコ
- 輸入元
- 株式会社モトックス
ナツメグや桃の香りが、りんごとシナモンの香りに重なります。穏やかな甘さを酸味が支え、バターの後味も軽くします。
お酒は20歳になってから。

アップルシュトゥルーデルとは
南チロルの菓子店や山小屋のショーケースには、粉糖をまとった細長い菓子がよく並んでいます。切り口をのぞくと、紙のように薄い生地が何重にも巻き込まれ、そのあいだからりんごとバターで炒ったパン粉が顔を出します。イタリアではストゥルーデル・ディ・メーレと呼ばれるアップルシュトゥルーデル。りんごの収穫を終えた秋から冬にかけて、家族が集まる食卓によく似合う一皿です。今日はその作り方を、なぜそうするのかも含めて、いっしょに見ていきましょう。
シュトゥルーデルという名前は、渦を巻くことを表す古いドイツ語に由来するといわれ、切り口に現れる渦巻きをそのまま指しています。知られている最古のシュトゥルーデルのレシピは、ウィーンの図書館に残る1696年の手書きの料理帳にある、牛乳とクリームを使ったもの。生地を手で引き伸ばしてりんごを包む「引き伸ばし式」のシュトゥルーデルは、1827年のウィーンの料理書に登場します。薄く伸ばす生地の技術は、オスマン帝国の時代にバルカン半島やハンガリーを経てウィーンへ伝わったという説がありますが、はっきりした記録は残っていません。
かつてオーストリアのチロルの一部だった南チロル(ボルツァーノ自治県)では、シュトゥルーデルは国の伝統食品リストに登録された郷土の菓子です。この州はイタリア有数のりんごの産地でもあり、トレント自治県のノン渓谷のりんごは原産地呼称保護の認定を受け、品種はゴールデン・デリシャス、レネッタ・カナダ、レッド・デリシャスの三つに限られています。収穫は8月から11月前半にかけての手摘みです。
クリスマスの菓子としては、ドライフルーツを使ったツェルテンが知られています。シュトゥルーデルは季節を問わず焼かれますが、新しいりんごが出そろう秋から冬は、やはりこの菓子がいちばん似合う季節です。なお南チロルでは、バターと卵にベーキングパウダーを加えたタルト生地で包む、ほろりと崩れる食感のシュトゥルーデルも家庭や菓子店で広く作られています。ここでは、ウィーンから伝わった古い形である、手で伸ばす生地の作り方を本格レシピとして紹介します。
3つのレシピ、ひとつの料理
同じ料理を3つのレベルで。本格にどこまで寄せるかは、あなた次第です。
アップルシュトゥルーデルの骨格は、粉と水と油だけの生地、薄切りのりんご、そしてバターで炒ったパン粉の三つです。生地には卵も砂糖も入れず、そのかわり向こうが透けるほど薄く伸ばします。りんごから出る果汁はパン粉が受け止め、薄い生地は焼くとパリッと香ばしい皮になって、何層にも重なります。
材料(8人分・長さ約40cmの1本分)
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 生地 | |
| 小麦粉(イタリアの00番) | 200g |
| ぬるま湯 | 100ml |
| 植物油 | 大さじ1と1/2 |
| 塩 | ひとつまみ |
| 打ち粉 | 適量 |
| フィリング | |
| りんご(レネッタ・カナダ種など酸味のある品種) | 1kg(皮と芯を除く前の重さ) |
| レモン | 1個(皮のすりおろしと果汁大さじ2) |
| グラニュー糖 | 70g |
| シナモン(パウダー) | 小さじ1 |
| レーズン | 60g |
| ラム酒(レーズンを漬ける用) | 大さじ3 |
| 松の実 | 40g |
| パン粉(細かい乾燥パン粉) | 80g |
| バター(パン粉を炒る用) | 40g |
| 溶かしバター(生地に塗る用) | 60g |
| 粉糖(仕上げ用) | 適量 |
作り方
1. 生地をこねて休ませる
小麦粉(200g)と塩(ひとつまみ)をボウルに入れ、ぬるま湯(100ml)と植物油(大さじ1と1/2)を加えて混ぜます。台に出し、表面がなめらかで手につかなくなるまで10分ほどこねます。丸めて表面に油を薄く塗り、ラップをかけて室温で30分以上休ませます。
なお、休ませることで生地のグルテンがゆるみ、伸ばしたときに縮みにくくなります。
2. りんごとレーズンを準備する
レーズン(60g)はラム酒(大さじ3)に漬けておきます。りんご(1kg)は皮をむいて芯を取り、4等分してから2〜3mmの薄切りにし、レモン果汁(大さじ2)をまぶします。
3. パン粉をバターで炒る
フライパンにバター(40g)を溶かし、パン粉(80g)を弱めの中火で、きつね色になって香ばしい香りが立つまで炒ります。皿に移して冷まします。
なお、このパン粉が、焼いているあいだにりんごから出る果汁を吸い、底の生地がふやけるのを防ぎます。
4. フィリングを合わせる
巻く直前に、りんごにすりおろしたレモンの皮、グラニュー糖(70g)、シナモン(小さじ1)、汁気をきったレーズン、松の実(40g)を加えて混ぜます。
なお、砂糖を早く混ぜておくと、りんごから果汁が出すぎてしまいます。
5. 布の上で生地を伸ばす
テーブルに大きめの布を広げ、打ち粉をたっぷりふります。生地をのせてめん棒でひと回り大きくのばし、両手の甲を生地の下に差し入れて、中心から外へ少しずつ引き伸ばします。下に敷いた布の模様が透けて見えるくらいまで、全体を均一に薄くし、縁の厚い部分は切り落とします。
なお、指先ではなく手の甲を使うと、生地に穴をあけにくくなります。
6. 具をのせて巻く
生地の表面に溶かしバター(60g)の一部を刷毛で塗り、手前側の3分の2ほどに炒ったパン粉を広げます。その手前寄りに、フィリングを帯状にのせます。両端の生地を内側に折り込み、布を持ち上げながら、手前から向こうへ転がすように巻きます。
なお、巻き終わりを下にして、オーブンシートを敷いた天板へ布から転がして移します。天板に収まらない長さなら、U字に曲げてのせます。
7. 焼いて仕上げる
表面に溶かしバターを塗り、180℃に予熱したオーブンで50分ほど焼きます。途中で一度バターを塗り重ね、全体が濃いきつね色になったら取り出します。粗熱が取れたら粉糖をふり、温かさが少し残るうちに切り分けます。
⚠️ やってはいけないこと
生地を休ませずに伸ばす
生地の弾力が強いまま引っぱると縮んで戻り、薄くなる前に破れてしまいます。
パン粉を省く
りんごの果汁で底の生地がふやけ、薄い層がつぶれて重たい食感になります。
りんごを厚く切る
焼いているあいだに火が通りきらず、薄い生地との食感がつり合いません。
手で伸ばす生地と聞くと、ハードルが高いと感じるかもしれませんが、必要なのは広めのテーブルと布一枚です。日本のスーパーで手に入る強力粉と紅玉で、本場と同じ仕組みのアップルシュトゥルーデルが作れます。家庭のオーブンの天板に合わせて、生地を2つに分けて2本焼くのがポイントです。
主な変更点
| 項目 | L1(本格) | L2(日本での代用) | 妥協点 |
|---|---|---|---|
| 小麦粉 | イタリアの00番 | 強力粉 | たんぱく質が多く、薄く伸ばしても切れにくい。焼き上がりの皮にやや歯ごたえが出る |
| りんご | レネッタ・カナダ種 | 紅玉(なければふじにレモン果汁を多めに) | 紅玉は酸味がはっきりして、焼いても形が残りやすい。ふじは甘く、やわらかく仕上がる |
| パン粉 | 細かい乾燥パン粉 | 乾燥パン粉を袋の上から手でもんで細かくする | 日本のパン粉は粒が粗いので、細かくすると果汁をむらなく吸う |
| 松の実 | 松の実 | 松の実、なければクルミ | クルミは香ばしさが強く、食感も変わる |
| 形 | 長い1本 | 天板に合わせて2本 | 一度に伸ばす面積が半分になり、扱いやすい |
材料(8人分:調理時間2時間)
| 材料(JP) | 元の名前(IT) | 分量 | どこで買えるか | 代用 |
|---|---|---|---|---|
| 生地(2本分) | ||||
| 強力粉 | farina 00 | 200g | どこでも | — |
| ぬるま湯 | acqua tiepida | 100ml | — | — |
| サラダ油 | olio di semi | 大さじ1と1/2 | どこでも | — |
| 塩 | sale | ひとつまみ | どこでも | — |
| 打ち粉用の強力粉 | farina | 適量 | どこでも | — |
| フィリング(2本分) | ||||
| 紅玉 | mele Renetta Canada | 約1kg(4〜5個) | 青果売り場(秋から冬) | ふじ+レモン果汁を多めに |
| レモン | limone | 1個 | 青果売り場 | 市販のレモン果汁大さじ2(皮は省く) |
| グラニュー糖 | zucchero | 70g | どこでも | 上白糖 |
| シナモンパウダー | cannella | 小さじ1 | スパイス売り場 | — |
| レーズン | uvetta | 60g | 製菓材料売り場、乾物コーナー | — |
| ラム酒 | rum | 大さじ3 | 製菓材料売り場、酒売り場 | ぬるま湯(子供向け) |
| 松の実 | pinoli | 40g | ナッツ・乾物コーナー、中華食材コーナー | クルミ |
| パン粉 | pangrattato | 80g | どこでも | — |
| 食塩不使用バター | burro | 100g(炒める用40g、塗る用60g) | 乳製品売り場 | 有塩バター(塩気が少し加わる) |
| 粉糖 | zucchero a velo | 適量 | 製菓材料売り場 | — |
作り方
-
強力粉(200g)と塩(ひとつまみ)をボウルに入れ、ぬるま湯(100ml)とサラダ油(大さじ1と1/2)を加えて混ぜます。台に出し、表面がつるりとなめらかになるまで10分ほどこねます。2等分して丸め、表面に油を薄く塗ってラップをかけ、室温で30分以上休ませます。
なお、こねる感覚は、うどんの生地を手でこねてなめらかにまとめるときに近いものです。休ませるとグルテンがゆるみ、伸ばしても縮みにくくなります。
-
レーズン(60g)はラム酒(大さじ3)に漬けておきます。紅玉(約1kg)は皮をむいて芯を取り、4等分してから2〜3mmの薄切りにし、レモン果汁(大さじ2)をまぶします。
なお、レモン果汁は、切ったりんごを塩水につけるのと同じように色が変わるのを防ぎ、焼き上がりに酸味も加えます。
-
フライパンに食塩不使用バター(40g)を溶かし、手でもんで細かくしたパン粉(80g)を弱めの中火で、きつね色になるまで炒ります。皿に移して冷まします。
なお、ごまを炒るときと同じで、色づき始めると一気に焦げるので、目を離さないようにします。
-
巻く直前に、りんごにすりおろしたレモンの皮、グラニュー糖(70g)、シナモン(小さじ1)、汁気をきったレーズン、松の実(40g)を加えて混ぜます。残りのバター(60g)は溶かしておきます。
-
テーブルに大きめの布巾か綿の布を広げて打ち粉をふり、生地1個をめん棒でひと回り大きくのばします。生地の下に手の甲を差し入れ、中心から外へ少しずつ引き伸ばして、布の模様が透けて見えるくらいまで薄くします。縁の厚い部分は切り落とします。
なお、小さな穴があいても、巻けば内側に隠れるので気にしすぎなくて大丈夫です。
-
生地に溶かしバターを刷毛で薄く塗り、手前側の3分の2ほどに炒ったパン粉の半量を広げます。その手前寄りに、フィリングの半量を帯状にのせます。両端を内側に折り込み、布を持ち上げながら、手前から転がすように巻きます。残りの生地も同じように伸ばして巻きます。
なお、布ごと持ち上げて巻いていく動きは、巻きすで海苔巻きを巻く要領と同じです。
-
巻き終わりを下にして、オーブンシートを敷いた天板に2本並べます。表面に溶かしバターを塗り、180℃に予熱したオーブンで45〜50分焼きます。途中で一度バターを塗り重ね、全体がこんがりときつね色になったら取り出します。
-
粗熱が取れたら粉糖(適量)をふり、切り分けます。
ヒント&コツ
- 焼いた当日がいちばんおいしく、残りはラップで包んで冷蔵で2日ほど保存できます。食べる前にオーブントースターで温め直すと、皮のパリッとした香ばしさが戻ります。
- 温かいうちに、バニラの香りのカスタードソースを添えるのも南チロルらしい食べ方です。
- 生地を伸ばすテーブルは、まわりをぐるりと歩いて手が届く大きさだと作業が楽になります。
布一枚と台所のテーブルでも、ここまでくれば十分にアップルシュトゥルーデルです。次に南チロルを訪れることがあれば、山小屋のテラスで一切れ頼んでみてください。薄い生地の重なりが、あなたの台所で巻いた一本の記憶と、静かに重なるはずです。
よくある質問
Q. 生地を手で伸ばすのが不安です。市販のパイシートで作れますか? A. 作れますが、別の食感になります。冷凍パイシートは層がふくらんで、さくさくとした菓子に仕上がります。イタリアでも手軽な作り方として見かけますが、紙のように薄い皮が重なる軽さは、手で伸ばす生地でしか出ません。
Q. 南チロルで食べたシュトゥルーデルは、生地がタルトのようでした。どちらが本物ですか? A. どちらも現地のシュトゥルーデルです。南チロルでは、バターと卵にベーキングパウダーを加えたタルト生地で包む作り方も広く親しまれていて、ほろりと崩れる食感が特徴です。手で伸ばす生地は、ウィーンから伝わった古い形です。
Q. どのくらい日持ちしますか? 冷凍できますか? A. 焼いた当日がいちばんおいしく、残りはラップで包んで冷蔵で2日ほどです。冷凍もできますが、解凍すると皮がしんなりしやすいので、オーブントースターで温め直してから食べてください。
Q. 子供でも食べられますか? A. ラム酒はレーズンを漬けるだけですが、焼いてもアルコールが完全に抜けるとは限りません。お子さん向けには、レーズンをぬるま湯で戻してください。
Q. この料理に合うワインは? A. アルト・アディジェ産の甘口のモスカート・ジャッロがよく合います。黄色いマスカットから造られる白で、華やかな香りが、りんごとシナモンの香りに重なります。
代用食材ガイド
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